職業:警察官
落語にはさまざまな職業が登場します。
演芸評論家の相羽秋夫さんならではの
切り口で落語国の仕事をみてみると……。
文/演芸評論家 相羽秋夫

警察官を前に署長が訓辞をしている。今日一日、無事故無違反ならば本庁から表彰されるので頑張れ、と言うのだ。
署員は、警羅(ら)に出かけ、交通事故や博打をしている現場に遭遇しても見て見ぬふりをする。なんとか記録が達成されようとした矢先に、他殺体が発見される。署員が署長に報告すると、署長「大丈夫だ。発見された場所は管轄外だ」。(作:3代目桂小春団治)
警察の仕事は、個人の生命・身体・財産の保護、犯罪の予防・鎮圧・捜査、被疑者の逮捕、交通の取締り、公安の維持などである。
組織の頂点は国家公安委員会で、その委員長は国務大臣が当たる。その下に警察庁があり、各都道府県に存在する警察本部を統括する。警察本部は、都道府県知事の下にある都道府県公安委員会に属する。東京都だけは都本部のことを警視庁と呼ぶ。
警察官には9階級あり、試験によって昇格する。上から、警視総監、警視監、警視長、警視正、警視、警部、警部補、巡査部長、巡査(巡査長は巡査に含まれる)である。警視正までは国家公務員の身分で、それ以下は地方公務員である。
主として犯罪の捜査に当たる私服の警察官を刑事と称する。刑事をデカと異称するのは、明治初期に刑事が角袖(かくそで)の衣服を着用していたので、カとデを倒語してデカと呼んだとされる。
我々に最も身近な交番(交番所の略)は、1994年に正式名称となった警察官の派出所である。外勤の巡査が担当する。
こうした組織の構築に貢献したのは福沢諭吉で、司法から明治初期に警察事務を切り離した。
江戸期には、裁判官と検察官と警察官が一体になっていた。町奉行・与力・同心・目明(めあかし)と呼ばれる職名の人たちである。巡回して、放火犯・盗賊・博徒の逮捕・取締りを担当した火付盗賊改(あらため)という特別の職名もあった。
今も昔も、人間は罪深い。
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