所在地:天王寺区生玉町~逢阪1丁目
写真/中原文雄 文/松本正行

大阪平野を南北に貫く上町台地。そこにはいまも多くの坂が残ります。なかでも風情を感じさせるのが天王寺七坂です。真言坂は唯一、南から北へと下る坂で、明治まで生國魂神社の神宮寺が軒を連ね、いずれも真言宗だったことからその名がつきました。坂の入口に源聖寺が建つ源聖寺坂(写真上)の石畳には、市電の敷石が再利用されています。ほのかに光る石畳は美しく、目を楽しませてくれます。
口縄坂の「口縄」とは蛇のこと。下から見上げると、うねる坂道が蛇の腹のように見えることから名づけられたそうです。織田作之助ゆかりの地としても知られ、文学碑が建ちます。愛染堂と大江神社から下るのが愛染坂(写真下の上)。かつては大阪湾に沈む夕日を望むことができました。清水坂は途中にある清水寺にちなむ名で、この一帯は古くから清らかな泉が湧く地として知られていました。
安居天神へと通じる天神坂にも、名水が湧いたとの言い伝えが残ります。そして、最後が逢坂(写真下の下)で、一心寺と安居天神の間を結ぶこの坂は難所と呼ばれるほどの急坂でしたが、明治期に緩やかに改修され市電も通っていました。いずれも江戸以前から存在していましたが、明治以降、まとめて「七坂」と呼ばれるようになったといいます。石畳を踏みしめながら歩けば、昔の人の息づかいも聞こえてきそう。大阪の歴史の奥深さを肌で感じられる、貴重な都市遺産です。


中原文雄
1948年生まれ。建築工房日想舎 主宰。NPO法人まち・すまいづくり会員。
松本正行
1965年生まれ。ライター・編集者。NPO法人まち・すまいづくり会員。
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