所在地:大阪市住吉区帝塚山西2丁目
写真/中原文雄 文/松本正行
大阪有数の高級住宅地・帝塚山。庄野潤三など数多くの文化人が住んだ地域としても知られますが、そもそもは新興住宅地で、明治までは家もわずかしかありませんでした。いまの阪堺電車上町線が通ることで開発が進んだ、といいます。
その帝塚山という地名は「帝塚山古墳」に由来します(写真上)。
国の史跡の前方後円墳で、全長約120メートル、幅は約50メートル(いずれも推定)。埴輪や古墳の形から、4~5世紀につくられたと考えられています。実は、古い地名などから南西に小さな古墳が、東に現存古墳よりもさらに大きな古墳があった可能性が指摘されています(『住吉区史』など)。つまり、古代のこのあたりはちょっとした古墳群だったわけです。
上町台地の西側で築造当時は海に近い場所ですから、ヤマト王権の外港である住吉津に向かう船にとって、大きな古墳は格好の目印になったことでしょう。一方、江戸期は住吉詣の際の観光スポットとして『摂津名所図会』などでも紹介されました。そして、いまは大阪五低山として注目が集まります。標高約20メートルで、地面からの高さ約9メートルながら、墳頂からはハルカスも望めます(写真下)。
埋葬されている人(埋葬者不明)も、写真のように自分のお墓の周りが住宅に囲まれるなど想像できなかったでしょう。
※大阪五低山は三角点のある古墳や山のうちで低い五座のこと。残りの四山は天保山、聖天山、御勝山、茶臼山。
※古墳の見学には事前の申し込みが必要です。ご注意ください(問合せなど詳細は「すみよし歴史案内人の会」HP)。
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中原文雄
1948年生まれ。建築工房日想舎 主宰。NPO法人まち・すまいづくり会員。
松本正行
1965年生まれ。ライター・編集者。NPO法人まち・すまいづくり会員。
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