所在地:大阪市天王寺区悲田院町
写真/中原文雄 文/松本正行
阪和線ホームと呼ばれるJR天王寺駅の1~9番線は、もともと阪和電鉄が作ったものです。ホームがくし形(頭端式)なのは、そのターミナル駅だったころのなごりで、駅だけでなくいまの阪和線自体、阪和電鉄が敷設しました。同電鉄は1929(昭和4)年に開業。南海との合併を経て、44(昭和19)年に戦時買収で国鉄阪和線となっています。
ホームを覆う大屋根は、ほぼ阪和電鉄が開業した当時のままだそうです。天井の高いドーム型屋根の鉄骨は実に美しい構成で、ヨーロッパの駅を彷彿とさせます。少し薄暗いところも、独特の雰囲気を醸し出しています(写真上。写真下は9番線から見た阪和線ホーム)。
個人的なことですが、父が和歌山県太地町の出身であったため、子どものころの筆者は毎年のように特急「くろしお」号に乗せてもらいました。当時のくろしおの始発駅は天王寺で、阪和線ホーム(1番線)に停まっている、ボンネット型をしたキハ81型の車両を見るたびに心躍らせたものです。
しかし、紀勢線の電化によってキハ81型は姿を消しました。特急「くろしお」の始発駅も新大阪駅に変わっています。それでも、いつか再び阪和線ホームに停まる特急で和歌山方面に向かってみたい――。そんなノスタルジックな気持ちにさせる何かが、あの大屋根のホームにはあります。
同じような思いを持つ人はきっと多いことでしょう。
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中原文雄
1948年生まれ。建築工房日想舎 主宰。NPO法人まち・すまいづくり会員。
松本正行
1965年生まれ。ライター・編集者。NPO法人まち・すまいづくり会員。
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