所在地:大阪市阿倍野区北畠3丁目・相生通1~2丁目付近
写真/中原文雄 文/松本正行
南北に細長く伸びる上町台地は北のほうが高く、最高地点は法円坂一帯で標高は約25メートルにもなります。南に行けば行くほど低くなるものの、それでも阿倍野区のあたりの高さは約15メートル。上町台地の西側は外海でしたから、高い台地は波で削られ北から南にかけて急峻な崖が続きました。
しかし、崖のままでは生活するには不便です。そこで、人工的に坂がつくられました。当然ながら、その多くは東から西に向かっての下りです。ところが、阿倍野区の南西部は浸食により谷が入り組んでできたため、南北にも数多くの坂がつくられました。そして、いつしか阿倍野神社を囲むようにある5つと、少し北にある2つの計7つの坂を、「阿倍野七坂」と呼ぶようになったのでした。
「さくら坂」(写真上)は桜の名所だったのでしょう。「みどり坂」「みなみ坂」の由来はよくわかりません。「やしろ坂」は阿倍野神社のお社から、「みや坂」(写真下の1枚目)も同じくお宮からの命名だと思われます。「相生坂(阪=石碑は阪)」(写真下の2枚目)は接する相生通りからその名がつけられたのは間違いありません。「相親坂」の「相」は相生通りから、「親」はそのあたりで人々が出会って親しく挨拶を交わしたことから来たそうです。
いずれも住宅街にある小さな坂です。石碑がなければ気づかず通り過ぎてしてしまいそうですが、その分、生活の温もりを感じます。いつまでも大切にしたい風景です。
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中原文雄
1948年生まれ。建築工房日想舎 主宰。NPO法人まち・すまいづくり会員。
松本正行
1965年生まれ。ライター・編集者。NPO法人まち・すまいづくり会員。
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