所在地:大阪市阿倍野区文の里1丁目
写真/中原文雄 文/松本正行
「バウハウス」をご存じでしょうか。ドイツにあった芸術・デザインの学校で、革新的な教育を施したことで知られます。デザインの世界に大きな影響を与え、それは現在の私たちの暮らしにもつながっています。たとえばIKEAなどのシンプルな家具はまさに「バウハウス的」。しかし、その革新さゆえにナチスドイツの弾圧に遭い、1919(大正8)年の開校からわずか14年で閉鎖に追い込まれたのでした。
日本でそのバウハウス流の教育を実践した学校が2校あります。東京にあった新建築工芸学院と府立工芸高校(2022年=令和4年より市立から府立に移管)で、工芸高校はバウハウス開校から4年のちの1923(大正12)年に創立、翌24年に写真(上)の本館が完成しました。実は、建物自体もバウハウスの校舎をモデルにした、とされます。鉄筋コンクリート3階建てで、1階と2階の外壁はレンガ積み。北西隅には大きなアーチの玄関があり、その上にはシンボルの時計塔が。「芸術・デザイン教育の拠点を大阪につくろう」。そんな関係者の意気込みがこの建物から伝わってきます。
2000(平成12)年に大阪市有形文化財、2008(平成20)年には経済産業省の近代化産業遺産に指定されました。もちろん、いまも現役の校舎として使用されています。下の写真を見たら、ヨーロッパの街角にいるような気がしませんか? これからは社会のあらゆる場面で、アートのセンスが必要になるといわれます。いままで以上に、この学び舎から有為な人材が輩出されることを期待しましょう。
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中原文雄
1948年生まれ。建築工房日想舎 主宰。NPO法人まち・すまいづくり会員。
松本正行
1965年生まれ。ライター・編集者。NPO法人まち・すまいづくり会員。
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