ライター・編集者 松本正行
「忠臣蔵」はみなさんもご存じでしょう。赤穂藩主の浅野内匠頭が江戸城中で刃傷事件を起こし切腹し、お家も断絶。しかし、遺臣たちが仇である吉良上野介の屋敷に押し入り……というお馴染みの話です。実は、「忠臣蔵」と一般に呼ばれるようになったのは、文楽の『仮名手本忠臣蔵』のヒットがきっかけでした。赤穂事件をモチーフにしたこの演目が話題になり、歌舞伎で上演され、浮世絵にも取り上げられ、この言葉が広まったのでした。
『仮名手本忠臣蔵』はじめ、歌舞伎の三大名作と呼ばれる『義経千本桜』『菅原伝授手習鑑』ももともとは文楽が“発祥”なんです。近松門左衛門の『曽根崎心中』など、他の芸能に影響を与えた文楽作品は数多くあり、日本の芸能に文楽は大きな影響を与えました。なのに「文楽を見たことない」って、なんだかもったいなくはありませんか。
さて、7月20日から夏休み文楽特別公演が始まり、さっそく見にいってきました(8月12日まで)。鑑賞したのは第2部「生写朝顔話(しょううつしあさがおばなし)」で、若い男女が皮肉な運命ですれ違うラブストーリーです(写真は「生写朝顔話」の1場面)。なかなか恋が成就しない主人公・深雪の苦悩が巧みに詞(ことば)と人形の動きに表されていました。比較的わかりやすい筋なので、あまり舞台上部にある字幕に頼らなくても楽しむことができました。
また、この作品には文楽を代表する「チャリ場」(滑稽な場面)があります。人間国宝の桐竹勘十郎さんが、この場面で主役級でない人形を遣うのも納得。人形の動きがあまりにも面白くて、いつの間にか前のめりで鑑賞していました。
他にも夏休み文楽特別公演では、第1部に親子劇場(『ひょうたん池の大なまず』と『西遊記』)が、第3部で『女殺油地獄』が上演されています。『女殺~』は言わずと知れた近松を代表する作品。また、親子劇場は昨年、鑑賞した人によると「子ども向けだけど大人も一緒に楽しめました。今年も見にいきます」とのこと。興味をもった人は、ぜひ文楽劇場に足を運んでみてください。
筆者紹介:上町台地上にある高津高校出身。新聞社・出版社勤務を経て、現在、WEBや雑誌等で活躍中。NPO法人「まち・すまいづくり」会員。
夏休み文楽特別公演(~8月12日)の詳細は下記をご覧ください。第1部にはお得な「親子割引」もあります。また、親子劇場観劇記念ぬり絵イベントも開催しています。
https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/bunraku/2024/6201.html?lan=jhttps://www.ntj.jac.go.jp/topics/bunraku/2024/2024nurie/ (塗り絵イベントはこちら)
※チケットプレゼントあります! 詳しくはこちら。