職業:葬儀屋
落語にはさまざまな職業が登場します。
演芸評論家の相羽秋夫さんならではの
切り口で落語国の仕事をみてみると……。
文/演芸評論家 相羽秋夫
企画に困ったテレビ局が、ついに葬式の生中継を始めた。
正装したアナウンサーが、葬儀会場から「絶好の葬式日和、ここ××葬儀場には、多くの参列者がつめかけております」といった調子で、帳場に行って集まった香典の額を尋ねたり、僧侶にインタビューしたりして盛り上げる。番組の最後に、提供スポンサーを紹介した後、「棺桶(かんおけ)買って天国に行こう!」
葬儀のことを、葬式、葬礼、弔(とむら)い、とも言う。大阪では、葬礼は「ソウレン」と発音する。幽霊を「ユウレン」と言うのと同じだ。「ソウレン過ぎての医者は無し」の諺がある。
葬儀屋は、近年は組織化されて葬儀店とか葬儀社と呼ばれるようになった。葬儀に関わる祭物を貸与又は販売し、葬儀の進行の全てを取り仕切るところである。
息を引き取ってから埋葬するまでの過程を葬儀と呼ぶ。葬儀後の行事は、仏教では「供養(くよう)」と言う。供養には、追善供養、施餓鬼(せがき)供養、開眼(かいがん)供養などがある。
日本で近年まで伝わっていた葬儀は、出棺までの家屋内で行われる諸式の「家葬礼」、死者に別れを告げ座敷から縁側を通って庭で葬列を整える「庭葬礼」、墓で僧に引導を渡してもらい埋葬する「墓葬礼」の3つに分ける。
埋葬にもさまざまな種類があって、かつては土葬が大半であったが、今日では火葬が主流になった。これらは“埋める”ことを意識したものだが、風葬(空葬)や鳥葬、水葬などは、“埋めない”が前提となっている。また、死体を原形に近い形で保存する“木乃伊(ミイラ)”葬は、エジプトやミャンマーで見られる。ちなみにミイラはポルトガル語である。
相手を説得するはずが、反対に説得されてしまうことを、「ミイラ取りがミイラになる」という諺で残している。
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