ライター・編集者 松本正行
前回のこの記事で、近松門左衛門が世話物というジャンルを確立したと書きました。文楽にはこの「世話物」と「時代物」の大きく2種類の演目があります(その他、音楽と舞踊的な要素の大きい「景事(けいごと)」という短い演目もあるので、正式には3種類)。
世話物は町人の生活・風俗を背景に、さまざまな出来事を扱ったもので、代表的な作品に『曽根崎心中』『心中天網島』『桂川連理柵』があります。最後の『桂川~』は落語の『胴乱の幸助』に出てくるので知っている人もいるでしょう(お半・長右衛門です)。また、『曽根崎心中』は生玉さんのシーンから始まり、これまた上町台地との縁が深いのです。
一方、時代物は平安から戦国までの武家社会の物語。『仮名手本忠臣蔵』や『菅原伝授手習鑑』は時代物の代表作です。
このうち、時代物のほうは登場人物が多く、また独特の様式や誇張された部分もあることから、初めての人にはとっつきにくいかもしれません。その点、世話物は庶民の話なので共感しやすいように思います。
それでも、「まだ文楽は難しそう」という人は近松作品の現代語訳から読んでみてはいかがでしょうか。小説のように楽しめて、きっと「本物の文楽も見たい!」となるはず。ちなみに、『週刊誌記者 近松門左衛門』(文春新書)は、非常にわかりやすい現代語訳でじっくりと『曽根崎心中』など近松作品を味わるので、おススメです。
さて、11月公演が近づいてきました。国立文楽劇場の40周年記念にふさわしい演目で『仮名手本忠臣蔵』が大序から七段目まで上演されます(冒頭の写真は六段目「早野勘平の切腹のシーン」)。電話とインターネットによるチケット販売は10月8日から(窓口販売は10月9日から)スタート。ぜひ名作中の名作を味わってほしいものです。
https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/bunraku/2024/611
また、10月25(土)26日(日)には中之島公会堂で『中之島文楽』も催されます。こちらもとっても興味深い催しです。
https://www.osakabunraku.jp/index.html
筆者紹介:上町台地上にある高津高校出身。新聞社・出版社勤務を経て、現在、WEBや雑誌等で活躍中。NPO法人「まち・すまいづくり」会員。