ライター・編集者 松本正行
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文楽の話題のなかにはしばしば「三業」という言葉がでてきます。三業とはすなわち「太夫」「三味線」「人形遣い」のことで、この三者が協力して、ひとつの舞台を作り上げます。どれかひとつが欠けても、文楽の舞台は成り立ちません。
太夫は場面の情景から登場人物のセリフ、物語の背景まですべてを語り分けます。アニメのように役に応じて太夫がいるわけではありません。物語のなかでも重要な場面(山場)は、実力のある太夫が担当し、彼らの名前の上には「切(キリ)」という字が書かれています。
三味線は、太夫の息継ぎを助けたり、テンポを調整したりといった役割を担う他、登場人物のさまざまな心理を三味線の音で弾き分けています。単なる「音楽担当」ではないんですね。ちなみに、文楽の三味線は太棹といって、通常の三味線よりも大きな音がでるうえ、音色にも深みがあります。
最後の人形遣いは三人一組で動かします。頭と右手を担当するのが「主遣い」。チームのリーダーです。残りの2人は「左遣い」と「足遣い」で、左遣いは「差し金」を使って操作します。主遣いの微妙な動きから、左遣いと足遣いは即座に何をすべきかを判断します。その連携プレーはほんと見事です。
国立文楽劇場では、舞台上の人間だけでなく、三業のみなさんの動きやしぐさ、表情などにも、ぜひ注目してみてください。
さて、次の公演が近づいてきました。令和7年4月文楽公演は、三大狂言のひとつ『義経線本桜』。今回は、3部に分け「通し狂言」(=作品のすべてを上演)です。チケットの販売は、電話とインターネットは3月8日、窓口は3月9日からスタートします。
今回も注目です。
https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/bunraku/2025/202504bunraku/
筆者紹介:上町台地上にある高津高校出身。新聞社・出版社勤務を経て、現在、WEBや雑誌等で活躍中。NPO法人「まち・すまいづくり」会員。