
展覧会に先立ち開催された内覧会に、弊紙のアートアドバイザーK氏が参加。レポートを寄せてくれました。

K:日本では約30年ぶり、没後としては日本での最初の回顧展。前回の開催は1995年。その時はフォロンが存命中でした。

「空想旅行案内人」とは「AGENCE DE VOYAGES IMAGINAIRES」の意訳。フォロンが自身の名刺に使用していた肩書から着想を得て、フォロン自身を案内人とし、彼自身の作品を巡る構成となっています。

プロローグ「旅のはじまり」
第一章「あっち・こっち・どっち?」
第二章「なにが聴こえる?」
第三章「なにを話そう?」
エピローグ「つぎはどこへ行こう?」
と、ほとんどの章で疑問符が投げかけられる展覧会構成は、フォロン自身からの問いかけであるかのように観覧者に迫ってきます。

初期には雑誌の表紙を飾り、その後も広告ポスターや雑誌の挿絵などに作品を提供し続けたフォロンの、メディアの枠も飛び越えた活動を見ることができます。
白黒のペン画から色彩を得、さらに立体造形にまで技法を広げていく様ともリンク。
そんな様々な作品群を前にしても観覧者が目にするのは、フォロン自身が世界をどのように見ていたか。

もちろん、フォロン自身は回答を示しません。
しかし、会場に流れる空気は彼の「ユーモア」にあふれています。
「ユーモア」について、フォロンは次のように定義しています。
「ユーモアとは、悲劇を悲劇的に語ることへの拒否である」(図録P.15)
悲劇が繰り返される世界ではあるが、そこから目を背けることなく、深く観察することの必要性をも訴えかけられているよう。
また、本展覧会は「フォロンの作品の多様性と首尾一貫性を紹介することを目的としている」(P.15)とのことですが、会場にあふれる「ユーモア」がそのことに一役買っています。
ぜひ、会場で、彼の「ユーモア」を体感してほしいです。