所在地:大阪市中央区高津1丁目
写真/中原文雄 文/松本正行
大阪には2つの高津宮があります。ひとつは仁徳天皇の宮殿があった高津宮で「たかつのみや」と読みます。もうひとつの高津宮は「こうづぐう」と読み、こちらは仁徳を主祭神とする高津神社の別名です(高津宮のほうが正式名称とされます)。
神社のほうの高津宮(写真上)は866年、清和天皇の勅命により社殿が築かれました。もともとは真田山の北方にあったそうですが、大坂築城の際、秀吉によって現在の場所に移されました。一方、仁徳が住んだ高津宮は高津高校の正門脇に「高津宮跡碑」が建っているものの、実はどこにあったのかはっきりとはわかっていません。
偶然なのか意図的なのかは定かではありませんが、秀吉の命により高津神社が遷座した先は高台(正しくは、上町台地のへり)でした。まさに「民のかまどは賑わいにけり」という仁徳の逸話にぴったり。私などは「ここが仁徳の高津宮のあった場所でいいのでは?」とすら思ってしまいます。
江戸期の高津宮からの「眺望は大坂一」と言われたそうで、浮世絵などを見れば、それがよくわかりますし、『東海道中膝栗毛』には遠眼鏡を覗く場面も出てきます。しかし、いまやビルに囲まれ、海岸線もはるかかなたで、当時をしのぶことはできません。それでも静寂さは昔のまま。いまも、本殿の前に立つと凛とした気配を感じます。それがまた、“古代の息吹”を漂わせているようにも思えるのです。
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中原文雄
1948年生まれ。建築工房日想舎 主宰。NPO法人まち・すまいづくり会員。
松本正行
1965年生まれ。ライター・編集者。NPO法人まち・すまいづくり会員。
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