ライター・編集者
松本 正行
(例文)社長のお噂は、部長よりかねがねうかがっています。
敬語は本当に難しい。
たとえば、例文のような表現はごくごく普通に使われています。実際、どこがおかしいの? と思った人は多いことでしょう。しかし、「身内を立ててはいけない」という原則からすれば明らかに間違いなのです。どこがどうおかしいのでしょうか。
(修正)社長のお噂はかねがねうかがっています。
違いは「部長より」があるかないかで、例文だと「部長より」があることで、話し手が部長に対してへりくだった形になってしまいます。そのつもりはなくても誤解を招きかねません。一方、修正文は「部長より」がないため、きちんと社長に敬意を表せています。あえて部長を入れるのなら、「部長を通して、社長のお噂はうかがっています」くらいにすべきでした。
「お隣の窓口で手続きをお願いします」も市役所などでよく聞きそうですが、これも「お隣の」ではなく単に「隣の」にすべき。丁寧に言おうという姿勢は買いですが、裏目に出ることもあるので注意したいものですね。
筆者紹介:上町台地上にある高津高校出身。新聞社・出版社勤務を経て、現在、WEBや雑誌等で活躍中。NPO法人「まち・すまいづくり」会員。