落語にはさまざまな職業が登場します。
演芸評論家の相羽秋夫さんならではの
切り口で落語国の仕事をみてみると……。
文/演芸評論家 相羽秋夫
江戸期の天和2(1683)年12月、本郷追分(現在の東京都文京区)の八百屋太郎兵衛一家は、大火で焼き出され、駒込(文京区から豊島区の一帯)の正仙寺に避難。太郎兵衛の娘お七(おしち)は、寺の小姓、生田庄之助(小説では吉三=きちざ)と恋仲になる。火災も一段落し、本郷に帰るにあたり、お七は庄之助恋しさに火をつける。その罪により火あぶりの刑が鈴ヶ森(品川区)で執行された。
この史実を井原西鶴が小説『好色五人女』で紹介し、浄瑠璃や歌舞伎になった。落語『お七の十』は、この物語の後日譚である。
小姓の吉三は、お七の死に接し悲観して吾妻橋(台東区と墨田区に架かる)から身を投げる。
地獄で再会した2人、思わず熱い抱擁をすると「ジュー」と大きな音がした。そのはずである。お七が火あぶり、吉三が入水自殺、火と水では「ジュ―」と音がするのは当たり前だ。また女の名が七、男が三で、足せば「ジュ―(十)」。
そのうち、お七の霊が鈴ヶ森に出るようになる。通りがかりの武士が「おまえのうらみを受けるいわれはない!」と、お七の両腕と片足を斬り捨てる。片足になったお七、一本足で逃げ出すので武士が「いずこへ参る」と問うと、お七の幽霊「片足(私しゃ)本郷へ行くわいな」。
八百屋とは、青物(野菜)を扱う店である。“八百(やお)”というのは、たくさんの意味で、多くの野菜を商いする店のことである。
野菜を大別すると、葉菜・葉茎菜・果菜・根菜・花菜になる。芋類や豆類は、本来は別の店で扱うが、八百屋にも置いてある店が多い。
「八百屋防風(ぼうふう)」というセリ科の多年草がある。浜防風、伊勢防風とも称する。白色の小さな花をつける。香気があって、刺身のつまに使う。漢方薬では、感冒に効くと言われている。
「八百長」とは、通称で八百長と呼ばれた八百屋が、いつも碁の勝負に細工をしたことから、不正をすることの代名詞になった。
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