落語にはさまざまな職業が登場します。
演芸評論家の相羽秋夫さんならではの
切り口で落語国の仕事をみてみると……。
文/演芸評論家 相羽秋夫
目を患った男、友人の紹介で名医と言われる眼科医に診察を仰ぐ。医者は男の目をくり抜き、消毒した後に陰干しにする。それを近所の犬が食べてしまう。仕方ないので、その犬の目を反対にくり抜き男に入れる。男はそれとは知らず、満足して帰宅する。
数日後、再診に訪れた男。暗い所でも良く見える。寝つきが良くなった。だが音がするとすぐ眼が覚める、と礼を述べた後、「1つだけ困ったことがあります。小便する時、片足が上げとうなります」。
脊椎動物(魚類・両生類・爬虫類・鳥類・哺乳類)は、一対の目を持っている。無脊椎動物でも、1つ又は2つの目を持っているものがある。
人間の目は、眼球・視神経・付属器(瞼・睫毛・網膜・涙器・眼筋)からなる。このどこかが悪くなると、われわれは眼科を訪れる。
1番ポピュラーなものが、近視・遠視・乱視だ。これらは年令と共に発症する場合が多い。古来より男性は「歯・目・摩羅」の順に老化していくことを嘆いた。
目の病いは他にも、緑内障や白内障、視力が低下する夜盲症、色別異常の色盲、やぶにらみとも称される斜視など、多くの異常がある。これらのうちには、手当てをしないと失明に至るものが多く、眼科の存在は大きい。
「目は口ほどに物を言う」と言われるように、目は一瞬にして、人間の心を写し出してしまう。「目から鱗(うろこ)が落ちる」「目から鼻に抜ける」「目から火が出る」「目くじらを立てる」「目には目」「目の上の瘤(こぶ)」「目の正月」「目を皿」など、目にかかわる諺はたくさんある。
ともあれ、視力の大切さは古くから唱えられ、すでに古代では星座を使って視力検査をしたと伝えられる。
現代の視力検査の基礎を作ったのは、眼科医の梅錦之丞で、1875(明治7)年に東京女子師範学校(現・お茶の水女子大)で、生徒の視力調査をしたのがはじまりとされている。10月10日は、“目の愛護デー”だが、5月1日も「目デー」と言って目の記念日だ。
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