職業:八卦見(はっけみ)
落語にはさまざまな職業が登場します。
演芸評論家の相羽秋夫さんならではの
切り口で落語国の仕事をみてみると……。
文/演芸評論家 相羽秋夫
長屋に住む神道の先生が、端午の節句にチマキを配った。そのお返しに、1軒百文を徴収し24軒で2貫4百文を集めて気の利いた人形を贈ることになる。
人形店で2貫3百文で購入し、余った百文で、世話役の2人は酒を呑もうとよからぬ計算をする。ところが、太閤秀吉と神功皇后の人形を決めかね、住人の八卦見(はっけみ)に占ってもらうと見料に百文取られてしまう。
占いで出た神功皇后に決め、神道の先生に持って行くと、先生は喜び神功皇后のいわく因縁を語り始めるので2人「あかん、またお金取られる」。
八卦見とは占いをする人のことで、八卦置(おき)とも言う。
八卦は、中国の周の時代に生み出された占いの法で、日本には平安期に伝わった。
筮竹(ぜいちく)と算木(さんぎ)と呼ばれる道具を組み合わせ、8種の卦(け)を作り出す。さらにこれを基礎に64種に発展させて、吉凶や運勢を占うものである。
その八卦とは、乾(けん)・兌(だ)・離(り)・震(しん)・巽(そん)・坎(かん)・艮(ごん)・坤(こん)を指す。
この八卦も含め、広く吉凶や運勢を予見する方法を、陰陽道(おんみょうどう)と称している。
平安中期には、日本では陰陽寮という役所が置かれ、宮廷や公廷の政治にも大きな影響を与えるようになった。とりわけ安倍晴明(あべのせいめい)は、たぐいまれな能力によって陰陽道家として名を馳せた。京に晴明神社、大阪に安倍晴明神社があり、大阪の阿倍野の地名も、晴明の生誕地から来たとの説もある。
「易者身の上知らず」という諺がある。他人の身の上の判断はするが、自分のことは分からない、の意である。「医者の不養生」「紺屋(こんや)の白袴(しろばかま)」も同じ意味の諺だ。
相撲の行司が「はっけよい! 残った!」と力士に発破を掛ける言葉の「八卦良い」は、運勢も良いので、さあがんばれ! と激励しているのである。陰陽道と相撲が深く結びついている一例である。
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