職業:パチンコ屋
落語にはさまざまな職業が登場します。
演芸評論家の相羽秋夫さんならではの
切り口で落語国の仕事をみてみると……。
文/演芸評論家 相羽秋夫

相撲好きの男が、相撲ずくめのパチンコ店を開業した。
店主自ら行司の衣装で軍配を持って店内を巡回する。パチンコ台は全て力士名が付いている。BGMに触れ太鼓が流れ、景品は相撲グッズに統一されている。
客の1人が、しこたま玉を出した上で、もう出ないと抗議すると、店主、行司口調で「これにて本日の打ち止め――」。(作:桂文福)
パチンコの前身になったのは、1930年代に大流行したコリントゲームである。わずかに傾斜した逆U字形の盤に10個の穴を開ける。その穴の周囲に釘を数本打つ。盤の右下から小さな球を棒で突き出し、球が穴に入った結果で優劣を決める室内遊戯だ。
欧米でピンボールゲームとして知られていたが、小林脳行という会社がこのゲームを移入した。小林をコリンと読み変えてコリント商会という会社名にし、ゲームもコリントゲームと名づけて、売り出したものである。
それを改良したパチンコは、ガラス張りの長方形の箱の下から発条(ばね)で小さな鋼球をはじき、多くの釘に囲まれた穴に入ると多数の球が出る仕掛けで、ご存じのとおり球の数でいろいろな景品に換えることが出来る遊技である。
機種はどんどん進化を見せ、最近はAIを導入したものなど、愛好家の興味を引くことに余念がない。そのため、パチンコ依存症という、社会現象を生んでいる。パチンコをすることが、生活の大部分を占め、多額の借金をかかえても止められない現状に苦しんでいる人が多い。
パチンコには、別の遊戯もある。二股の小枝にゴムひもを付けて、小石をはさんで飛ばす玩具を指すことがある。
また、ピストルの隠語としても、警察関係者や犯罪者の間で使われている。
「パチンコ台裏の狭さに乳房熟(う)る」(橋本修)の印象的な俳句が残る。
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