ライター・編集者 松本正行

「令和7年爽秋文楽特別公演」がスタートしました。A・B・Cの3部構成で、私はBプロの『心中天網島』を見てきました。『心中天網島』はいわずと知れた近松の代表作のひとつ。実際に合った心中事件をもとに書き下したとされます。ちなみに、網島は藤田美術館があるあたりの地名で、ここにあった大長寺で心中事件は起こりました(現在、大長寺は別の場所に移転)。
妻子のある店の主人が遊女と恋仲になるが、突然、遊女から縁切りを告げられる。そこには、男の女房からの依頼があり……。ところが、遊女が死を覚悟していることを知ると、逆に女房は男に身請けするように勧める。だが、女房は父親に連れ戻され、身請けの金も用意できず、男と遊女は心中する道を選ぶ――そんな話です(写真は道行の場面=画像提供:国立文楽劇場)。
見どころは、女房と遊女が義理立てし合う、その心の動きの妙でしょう。一方、男・紙屋治平はなかなか決断できない。遊女との別れ話に意気消沈し、こたつに入って落ち込む男を見て、女房が嘆くシーンなどは、とくに有名です。そのため、文楽一の「ダメ男」とも評されるのですが、人間国宝・吉田玉男が人形を遣うと、どことなく「かっこよく」見えるのですから不思議ですね。
WEBサイトなどを使って簡単に、あらすじを頭にいれておけば、初心者でも十分楽しむことができます。Cプロで上演される『曽根崎心中』も初心者向きなので、どちらか時間の合うほうを見に行かれることをお勧めします。なお、Aプロの演目は『恋女房染分手綱』と『日高川入相花王』。『日高川入相花王』は有名な安珍・清姫の話です。
●「令和7年爽秋文楽特別公演」(~10月14日)
https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/bunraku/2025/7/
筆者紹介:上町台地上にある高津高校出身。新聞社・出版社勤務を経て、現在、WEBや雑誌等で活躍中。NPO法人「まち・すまいづくり」会員。
![]() |
※楽天ブックスでチェック
|
![]() |
※楽天ブックスでチェック
|
![]() |
かぶきがわかるねこづくし絵本2 義経千本桜 (講談社の創作絵本) [ 吉田 愛 ] ※楽天ブックスでチェック
|