ライター・編集者 松本正行
国立文楽劇場の「令和7年新春文楽公演」がスタートしました。
今回は第3部の『本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)』、近松門左衛門以降の代表的な浄瑠璃作家・近松半二(半二は門左衛門の孫弟子の世代)の作品を観劇。全5段のうち、とくに人気の高い四段目が上演されています。
主な登場人物は謙信の娘・八重垣姫と信玄の息子・勝頼で、なんと、この二人は許嫁なのでした。その勝頼が将軍暗殺事件に絡んで切腹することになって……。ところが、切腹したのは替え玉で勝頼は生きていたんですね。それを知らずに、八重垣姫がお香を焚いて一心に回向をするのが「十種香の段」。続く「奥庭狐火の段」は、勝頼が生きていることを姫が知り、迫る危機を勝頼に知らせようと信玄秘蔵の兜に祈る。すると、兜のご神体である白狐が登場し、白狐がのり移った姫が諏訪湖を渡っていく――そんなストーリーです。
見どころは、なんといっても「奥庭狐火の段」の白狐登場のシーンでしょう(写真はその一場面)。人形の動きがリアルなだけでなく、とても幻想的。ここは三味線の聴き所でもあり、糸をこすったり指で弦をはじいたりして、狐の足の動きや鳴き声を表現するんです。まるで、ミュージカルを見ているような感覚で楽しめました。
「初春文楽公演」は1月26日まで。第1部は『新版歌祭文』(こちらも近松半二の作品)で、第2部は『仮名手本忠臣蔵』(8段目と9段目)でどちらも楽しめますが、個人的にはやはり第3部の『本朝廿四孝』がおすすめですね。ぜひ、初春は文楽を見て華やかな気分になってください。
https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/bunraku/2024/202501bunraku/
筆者紹介:上町台地上にある高津高校出身。新聞社・出版社勤務を経て、現在、WEBや雑誌等で活躍中。NPO法人「まち・すまいづくり」会員。