所在地:大阪市中央区日本橋1-12
写真/中原文雄 文/松本正行
ユネスコの無形文化遺産にも指定される文楽は、大阪が世界に誇る芸能と言って間違いありません。人形劇は世界中にありますが、人形1体を3人が操るのは文楽だけ。それによって生み出す微妙な動きと、太夫の語り、三味線の伴奏によって登場人物の性格や心情を見事に表現します。「文楽は高度な総合芸術」と評した人もいますが、一度、文楽を鑑賞すればそれも納得できるでしょう。
そんな文楽の拠点が国立文楽劇場です(写真上)。設計は世界的建築家・黒川紀章で、1984(昭和59)年に完成しました。黒の格子模様を基調にした伝統的な和風のデザイン。正面の中央上部には櫓を模したでっぱりがあり、他にも竹矢来、唐破風などを昔の劇場を彷彿する意匠がそこここで見られます。林立する銀の柱は、近松作品などに登場する遊郭の格子をイメージしているのでしょうか。
劇場機能のほか、中は人形遣い、太夫、三味線弾きの養成所にもなっています。資料室もあって自由に見学できるので、覗いてみましょう。そして、少しでも興味をもったら文楽自体を見ることをお勧めします。
見過ごされがちですが、劇場前に「二つ井戸」のモニュメントがあります(写真下)。並んで掘られた2つの井戸は珍しく、『摂津名所図会』や織田作之助の『夫婦善哉』にも登場する名所でした。本来の場所は100メートルほど北で、昭和の終わりまであたりは二ツ井戸町と呼ばれていたそうです。そうした趣ある町名は、できれば残して欲しかったですね。
中原文雄
1948年生まれ。建築工房日想舎 主宰。NPO法人まち・すまいづくり会員。
松本正行
1965年生まれ。ライター・編集者。NPO法人まち・すまいづくり会員。
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