所在地:阿倍野区北畠3
写真/中原文雄 文/松本正行
阿部野神社(写真上)は明治18(1885)年創建の比較的新しい神社です。主祭神は前回(第43回‐住吉行宮)紹介した北畠顕家(写真下)、そして顕家の父・北畠親房。親房は南朝の重臣で、南朝の正統性を説く『神皇正統記』を著したことでも知られます。
顕家は主に東北で、親房は伊勢や関東で活動しました。なかでも伊勢はのちに親房の子孫が拠点とし、南北朝合一後もたびたび子孫たちは兵を起こしています。それらと違って阿部野神社のある場所は、北畠氏の支配地だったわけではありません。神社が建ったのは、このあたりで顕家が戦死したとされるのが理由ですが、堺で亡くなったのが正しいと考えられています。北畠公園にある顕家の墓とは別に、堺市西区にも顕家の墓と供養塔が建ちます。
しかしながら、いまや阿部野神社が地元になくてはならない存在となったことは間違いありません。四季折々の花や木、祭りなどが人々を楽しませてくれますし、摂社末社も多く、ご利益の種類も豊富。とくに勇壮そのものの2頭の神馬像(西参道の大階段上にあります)は交通安全に霊験あらたかだ、とか。神社の賑わいはきっとこれからも変わらないでしょう。
ちなみに、戦国期に活躍した村上水軍の一族は顕家を祖とするという話がありますが、これも顕家の武勇にあやかろうとしたもの、と考えるのが正しいと思われます。
中原文雄
1948年生まれ。建築工房日想舎 主宰。NPO法人まち・すまいづくり会員。
松本正行
1965年生まれ。ライター・編集者。NPO法人まち・すまいづくり会員。
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