所在地:大阪市阿倍野区阿倍野筋4丁目
写真/中原文雄 文/松本正行
江戸期の大坂には「七墓めぐり」という風習がありました。盂蘭盆会の夜から翌朝にかけ鉦や木魚を叩きながら七か所の墓を巡るというもので、無縁仏の供養により功徳を得ることを人々は願ったのです。七つの墓には変遷があるものの、おおむね梅田、南浜、葭原(よしはら)、蒲生、小橋(おばせ)、飛田、千日だったといわれています。
明治になり市街地が拡張されるに伴って、七墓を含む多くの墓地は、当時、郊外だった場所にできた新しい墓地に整理・集約されます。その新墓地のひとつが「阿倍野墓地」(写真上)です。正式には「大阪市設南霊園」といいます。
1876(明治9)年の完成で、明治から昭和にかけ活躍した政治家、経済人、文化人が多く眠ります。なかでも有名なのが大阪経済の基礎をつくった五代友厚でしょう。五代には北海道官有物払下げ事件による負のイメージもありますが、研究が進みいまは事件には無関係だったといわれるようになっています。他にも、名市長として知られる関一や日本画家の菅楯彦(すがたてひこ)などの墓があります。
阿倍野墓地は総面積6.2ha、墓碑の数1万4000。その規模がいかに「広大か」はあべのハルカスの展望台から見れば一目瞭然です。南側の下に、筆箱のような細長い四角形がくっきりと浮かび上がっているのがわかるでしょう(写真下)。ぜひ、現地と「空の上」から、大阪の近代遺産とそれに連なる歴史の重みを感じて欲しいものです。
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中原文雄
1948年生まれ。建築工房日想舎 主宰。NPO法人まち・すまいづくり会員。
松本正行
1965年生まれ。ライター・編集者。NPO法人まち・すまいづくり会員。
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