所在地:大阪市中央区玉造2丁目
写真/中原文雄 文/松本正行
『東海道中膝栗毛』はみなさんご存じの旅をテーマとした滑稽本ですが、京・大坂見物とは別に、弥次さんと喜太さんの一番の目的が伊勢参りだったことは意外と知らない人が多いようです。江戸時代、伊勢参りのブームがたびたび起こりました。それは上方も同様で、19世紀の初めの大坂では、玉造を拠点とした商人がいまでいう「旅行会社」を立ち上げます。よりいっそう伊勢参りは盛んになり、起点(集合場所)となった玉造稲荷神社(写真上)も旅人で大いににぎわったといいます。
そんな玉造稲荷神社ですが、第11代の垂仁天皇が創建、物部と蘇我の争いの際に蘇我側の聖徳太子が陣を構え祈願したという伝承が残ります。のち豊臣氏から大坂城の鎮守社として尊崇を受け、秀頼の代には本殿や鳥居の再建などさまざまな援助が行われました。そのため、境内には秀頼の銅像が建ちます。徳川の時代になっても“大坂城の守り神”としての地位は変わらなかったそうです。
ところで、玉造稲荷神社を出た伊勢参りの一行ですが、いまのJR玉造駅あたりにあった「つる屋」と「ます屋」という茶屋で見送りの人との別れを惜しみました(写真下は「玉造二軒茶屋碑」)。このあと、東に進み暗峠を越えて奈良に、そこから桜井(奈良県)、榛原、奥津、松坂(いずれも三重県)を通って伊勢に向かったのでした。その距離約170キロ。現在、大阪ユースホステル協会が昔と同じ行程を歩いてたどるイベントを開催しています(伊勢迄歩講)。興味のある人は、参加してみてください。
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中原文雄
1948年生まれ。建築工房日想舎 主宰。NPO法人まち・すまいづくり会員。
松本正行
1965年生まれ。ライター・編集者。NPO法人まち・すまいづくり会員。
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