所在地:大阪市中央区上本町西~松屋町
写真/中原文雄 文/松本正行
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豊臣時代の大坂城(大阪城)は、いまよりもはるかに広く、東はJR車庫あたりを流れていた猫間川、西は東横堀川、北は淀川すなわち大川で、南の西半分には堀を構えていました。この堀は水をたたえていない空堀。そこにできたのが空堀商店街(写真上)です。大正時代に原型ができ、その後、上町筋・谷町筋・松屋町筋の3つの大通りを結ぶまでに発展しました。
全長は800メートル。戦災を免れたこともあって昭和の香りが漂い、映画やドラマのロケによく使われています。「昔に比べるとずいぶんお客さんの数は減った」と年配の方は言いますが、老舗に交じって、若い人たちが開いたお店も増えました。周囲にはクリエーターが多く住むようにもなり、商店街周辺の町屋や長屋を再生した商業施設(「惣」や「からほりlen」など)にも人気が集まっています。
ただ、個人的には商店街から少し中に入った石の階段や石畳、堀のたたずまいが気に入っています。写真下のような景色を見たらグッときませんか。実際、便利の悪い坂の下にもお店が増えています。こういう空間は再開発によって生み出せるものではありません。人々の営み、歴史の積み重ねが不可欠。文化の創生や地域のあり方を考えるものとしてもうまく活用できるのでは――そんなふうに思っています。
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中原文雄
1948年生まれ。建築工房日想舎 主宰。NPO法人まち・すまいづくり会員。
松本正行
1965年生まれ。ライター・編集者。NPO法人まち・すまいづくり会員。
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