所在地:大阪市天王寺区伶人町
写真/中原文雄 文/松本正行
夕陽丘にある清水寺から大阪星光学院を見た光景です(写真上)。星光学院の場所には江戸から明治にかけ、大阪を代表する料亭「浮瀬亭」がありました。浮瀬と書いて「うかむせ」と読みます。『曽根崎心中』のなかに浮瀬亭を思わせる描写があるので、17世紀後半にはすでにあったものと思われます。
松林に囲まれた2階建ての建物が2棟。『摂津名所図会』には、大坂湾を行き交う白い帆、そしてその先にある淡路島まで見渡せる場所であったと記されています。『浪速百景』の「増井浮瀬夜の雪」では、実に情感深く、その姿が描かれています(写真下=大阪市立中央図書館蔵)。
浮瀬はアワビでこしらえた7合半も入る大盃の名で、いつしか店の名物が店名にもなったのでした。文楽・歌舞伎の演目『摂州合邦辻』には、主人公の母親が息子の病を治すため、自分の血をその浮瀬に入れて飲ませるシーンが出てきます。
そんな浮瀬亭も1887(明治20)年ごろ売りに出されたそうです。詳しい経緯はよくわかっていません。いまは、跡地に建つ芭蕉や蕪村の句碑と坂の途中にある案内板だけが往時を忍ばせます。
※句碑のある「蕉蕪園」は星光学院の校内にあります。見学には許可が必要です。
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中原文雄
1948年生まれ。建築工房日想舎 主宰。NPO法人まち・すまいづくり会員。
松本正行
1965年生まれ。ライター・編集者。NPO法人まち・すまいづくり会員。
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