所在地:大阪市阿倍野区阪南町1丁目
写真/中原文雄 文/松本正行
大阪メトロ昭和町駅から北西に少し歩くと、大きな塔を持つ建物が見えてきます。1926(大正15)年に設立された日本基督教団「南大阪教会」(写真上)で、1928(昭和3)年に完成したその塔屋と礼拝堂は、大阪を代表する建築家・村野藤吾が手がけました。村野が個人事務所を設立する前の年に設計した、事実上の村野作品の第一号です。
「〇+☐」をあしらった塔側面の窓枠や礼拝堂の特徴的な美しい丸みなど、この建物には村野らしさを随所に見ることができます。それだけに強い愛着があったのでしょう。「私の長男」と村野が呼んでいた、という話も伝わります。実は、現在の礼拝堂は81(昭和56)年に改築されたのですが、その際も村野が設計しました。塔は創建時のままなので、最初期と最晩年の村野作品が、同時にこの建物では味わうことができるわけです(村野は84年=昭和59年没)。
また、この教会が運営し隣接する幼稚園の敷地には、ある有名な童謡の歌碑があります。歌の名前は『サッちゃん』(写真下)。作者の阪田寛夫(『土の器』で芥川賞も受賞)は園の2期生で、1歳上で同じ園に通う「さちこ」という女の子をモデルに書いた、と言われています。いまなお愛される歌の舞台が上町台地だったと知り、なんだかうれしくなります。
1981年の新礼拝堂の完成に際して、教会の信者である阪田もお祝いに駆けつけました。村野と一緒に撮った写真も残っています。
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中原文雄
1948年生まれ。建築工房日想舎 主宰。NPO法人まち・すまいづくり会員。
松本正行
1965年生まれ。ライター・編集者。NPO法人まち・すまいづくり会員。
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