所在地:大阪市天王寺区茶臼山町
写真/中原文雄 文/松本正行
大阪を代表する名園「慶沢園」(写真上)は、もともとは住友家本邸の庭でした。1908(明治41)年に造園を開始し1918(大正7)年に完成。手がけたのは近代日本庭園の先駆者とされる作庭家・小川治兵衛(七代目)で、平安神宮の神苑や円山公園など小川の作品のいくつかは国の名勝にも指定されています。
有名な庭園の多くが池とその周囲を巡る園路を中心に作庭する池泉回遊式なのに対し、ここは池、築山、曲水、樹林などを眺めながら一回りすると絵巻物を観たような感じになるという林泉回遊式です。池越しに美術館が見えたり、小さな滝や飛び石があったりと随所に仕掛けがほどこされており、飽きることがありません。まさに都会のど真ん中にあるオアシス。一方で、これだけのものをつくった住友家の財力に驚かされます。
ところが、完成からわずか3年で住友本家は神戸に移転。隣接する敷地(現在の大阪市立美術館。次回紹介します)とともにこの庭園は大阪市に寄贈されました。結果的に、オアシスは市民のものとなり、気軽に楽しめるようになったのでした。
見どころはいくつもありますが、やはり池に映し出された「逆さハルカス」はぜひ、写真に収めたいものです(写真下)。200種類にも及ぶ木々が植えられており、春の桜や秋の紅葉など季節ごとに草木を楽しむのも一興でしょう。
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中原文雄
1948年生まれ。建築工房日想舎 主宰。NPO法人まち・すまいづくり会員。
松本正行
1965年生まれ。ライター・編集者。NPO法人まち・すまいづくり会員。
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