所在地:大阪市天王寺区茶臼山町
写真/中原文雄 文/松本正行
通天閣がある繁華街「新世界」を出て動物園の真ん中を貫く陸橋を東に向かい、階段を登り切ったところに見える“白亜の殿堂”。あまり大阪に馴染みがない人は、さっきまでいた新世界界隈とのギャップに驚くことでしょう。著者が初めて訪れたのは40年も前の高校生の時でしたが、「大阪にもこんな場所があるんだ」と誇らしく思ったものでした。
大阪市立美術館は1936(昭和11)年の開館(写真上)。公立美術館としては東京、京都に次ぐ歴史をもちます。土地は隣接する慶沢園とともに住友本家が寄贈しました。登録有形文化財指定の建物は、旧・大阪市立大学1号館を手掛けた伊藤正文などが設計を担当しています。
地上3階、地下1階の鉄筋コンクリート造り。当時流行していた和洋折衷の帝冠様式ではなく、あえて蔵を模した近代和風にしたのは、収蔵施設であることも表現するためだ、といわれます。それとは逆に内装は豪華なシャンデリアや大理石をふんだんに使用した純洋風で、入ってすぐの中央ホールに立つと、ヨーロッパの王宮にいるような気分すら味わうことができます。
実は、見どころは美術館の外にもあって、新世界につながる階段からの眺め、とくに夕方のそれはまさに絶景なのです(写真下)。個人的には地上から見える夕景では上町台地で一番。もし、いまの時代に法然上人が生きていたら、ここを日想観の場所に選んだかもしれません。
※大阪市立美術館は大規模修繕のため、2022年9月26日より長期休館に入ります。2025年春再開の予定です。
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中原文雄
1948年生まれ。建築工房日想舎 主宰。NPO法人まち・すまいづくり会員。
松本正行
1965年生まれ。ライター・編集者。NPO法人まち・すまいづくり会員。
※「うえまち」読者が推薦する上町台地の名所のうち、100か所を地図にした『上町台地名所百景』。大阪歴史博物館1Fにあるミュージアムショップで販売中です(税込400円)。