所在地:(ともに)大阪市阿倍野区阿倍野元町
写真/中原文雄 文/松本正行
安倍晴明の影響もあるのでしょうか、安倍氏といえば陰陽師の印象が強いようですが、陰陽道の家として知られるようになったのは平安中期以降。飛鳥期は蘇我氏などにつぐ有力豪族で、平安前期までしばしば高位高官を輩出しました。その安倍氏が治めた場所が、いまの阿倍野区あたりです。安倍氏はもともと「阿倍」と表記しており、区の名前もそれに由来しているとされます。
阿倍王子神社(写真上)は、安倍氏の氏寺があった場所に建ちます。安倍氏の衰退に伴い氏寺は四天王寺に併合され、氏神のための社のみ残されたのですが、熊野詣が隆盛となり王子社(休憩と遙拝のためのお宮)として整備されました。鳥居の前にある道が昔の熊野街道で、小さな碑も建っています。
一方、安倍晴明神社(写真下)は、この地で安倍晴明が生まれた、といわれます(父親が女狐と契って産んだ子といった話も)。もっとも、晴明出生の伝承は各地にあり定かではありません。それでも不思議な力をもったとされる晴明にあやかって、江戸期には参拝の人が絶えなかったそうです。
そして、近年の晴明人気です。明治以降、衰微し阿倍王子神社の末社になった安倍晴明神社ですが、いま再び訪れる人が増えました。どんな形であれ、大阪の街や歴史に関心を持つ人が増えるのはうれしいものです。
#名所図会 #名所百景 #うえまち台地 #上町台地 #大阪市 #安倍晴明 #陰陽師 #阿倍王子神社 #安倍晴明神社 #熊野街道
中原文雄
1948年生まれ。建築工房日想舎 主宰。NPO法人まち・すまいづくり会員。
松本正行
1965年生まれ。ライター・編集者。NPO法人まち・すまいづくり会員。
※「うえまち」読者が推薦する上町台地の名所のうち、100か所を地図にした『上町台地名所百景』。大阪歴史博物館1Fにあるミュージアムショップで販売中です(税込400円)。